2025年5月18日〜5月24日のマクロ経済レポート

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  • 米長期金利が急騰、S&P500・ナスダックは年初来最大の週間下落。 ムーディーズ格下げと20年債入札不調が「財政リスク→金利上昇→ハイテク株売り」の連鎖を誘発しました。
  • トランプ大統領がEU製品やスマートフォンに高関税を示唆。 貿易摩擦再燃への警戒でリスクオフが加速し、株・ドルに同時売り圧力。
  • ドル円は一気に142円台へ円高進行。 「ドルの信認低下+安全資産としての円買い」が重なり、3月以来のドル安水準を試す展開に。
  • WTI原油は60 ドル前後で乱高下。 OPECプラスの増産観測とイラン核協議の行方が上値を抑える一方、ドル安と米住宅指標の底堅さが下支え。
  • ビットコインは11.2万ドル台に乗せ史上最高値更新。 株・債券からの資金逃避先としてオルタナティブ資産への関心が一段と高まっています。



2025年5月18日〜5月24日のマクロ経済レポート

今週(5/18〜5/24)の市場動向と考察

株式市場:米国株(S&P500・ナスダック)と日経平均

今週の米国株式市場は、半導体を中心とするハイテク株主導の上昇基調が一服し、下落に転じました。S&P500指数は前週まで6日続伸し、4月の安値から20%近い上昇で強気相場入り寸前まで上昇していました。しかし5/19週は反落に転じ、週間ではS&P500とナスダック総合指数がそれぞれ2.5%以上下落する大幅安となりました。背景には、ムーディーズによる米国信用格下げ(先週末)を機に財政赤字への懸念が高まったことや、それに伴う米国長期金利の急上昇があります。金利上昇で将来収益を現在価値に割引く際の圧力が強まり、特に高PERのハイテク株に割高感警戒の売りが出ました。「金利上昇局面では現在の非常に高い株価バリュエーションを正当化するのが難しくなる」との指摘も市場から聞かれています。さらに週後半にはトランプ米大統領の関税発言がリスクオフに拍車をかけました。トランプ大統領は欧州連合(EU)からの輸入品に6月1日から50%の関税を課す考えや、米国内で製造されていないスマートフォン(米大手メーカー製品や韓国サムスン製を含む)に25%の関税賦課を警告し、貿易摩擦激化への懸念が再燃しました。これを嫌気して投資家心理が悪化し、週末5月23日の米株式市場ではS&P500が前日比-0.67%、ナスダック総合は-1.0%の急落となりました。景気敏感なダウ平均も同日-0.6%下落しています。

日本株も米株に連動して不安定な値動きとなりましたが、日経平均株価は週末にかけて下げ渋りました。米国市場でハイテク株が下げ渋りナスダックが小幅上昇に転じた5月22日には、為替がやや円安方向に振れたことも支えとなり、東京市場でも半導体株や防衛関連株に買い戻しが入りました。その結果、5月23日の日経平均は前日比+0.47%と3日ぶりに反発し週を終えています。もっとも、米欧の貿易摩擦問題など不透明要因が多いため上値では戻り売りも出やすく、日経平均は3万7400円近辺で上昇が抑えられる場面も見られました。総じて、米国の金融・貿易政策を巡る不透明感から投資家の慎重姿勢が強まり、株式市場は前週までの楽観ムードから一転して調整局面に入った形です。

米国金利(2年債・10年債利回り)

今週は米国債券が大きく売られ、長期金利が急騰しました。10年物国債利回りは週央に一時4.6%台へ急上昇し、30年債利回りも5%を超える展開となりました。これは米国の財政赤字拡大や国債増発への懸念に加え、5月21日に実施された20年債入札が不調だったことが引き金となりました。格付け会社ムーディーズが先週末に米国債の信用格付けを最上位AAAから引き下げたこともあり、米国債の需給悪化観測が強まった格好です。実際、20年債の表面利率は再導入後最高の5.0%に達し、入札需要が低調だったため市場で長期債が一斉に売られました。この影響で米株式市場は月間で最悪となる下げ(S&P500指数は-1.6%)を記録する場面もあり、債券と株式が同時安となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退したこともあり、2年債利回りも約4.0%前後まで上昇しています。週末には株安を受けて安全資産として国債買いがやや入り、10年債利回りは4.51%で引けと週央の高値からは若干低下しましたが、それでも前週比では大幅な利回り上昇(債券価格下落)となりました。利回り急騰について、市場では「長期金利の大幅上昇局面では株式などリスク資産に向かい逆風となりうる」との警戒感が広がっています。今週の動きは、財政悪化への懸念が金利上昇を通じて他の市場にも波及するリスクを示しました。

ビットコイン(暗号資産)

暗号資産ビットコインは今週も堅調で、約5%上昇しました。一時は史上初めて11万2000ドル台を突破し、ここ7週間で6回目の週間上昇となる勢いです。伝統的な株式や債券が軒並み下落したのとは対照的に、ビットコインには資金流入が続いています。実際、今年に入って米国上場のビットコイン連動ETFには累計100億ドル超の資金が流入し、投資家の関心の高さを示しています。今週は米国債や株式が財政不安・金利上昇を背景に一斉に売られたため、ポートフォリオの分散先としてビットコインの魅力が相対的に浮上した面があります。「流れに抗い続けることは難しく、少なくとも有望な資産クラスだと認めざるを得ない」と、一部の機関投資家もビットコインを無視できない存在と評価し始めています。もっともビットコイン自体は価格変動が大きく、安全で信頼できる分散投資先と言えるわけではありませんが、インフレヘッジや法定通貨と相関の低いオルタナティブ資産として注目が集まった週と言えます。今週は金価格も週次で約5%上昇しており、リスク資産から代替資産への資金シフトが鮮明でした。

為替相場(ドル円)

今週、外国為替市場ではドル安・円高が急速に進行しました。ドル指数(対主要通貨バスケット)は5月に入り下落基調を強め、年初来の下落率が7%を超える場面となっています。特にドル円相場では円が買われ、ドルは1ドル=142円台前半まで下落(円高)しました。5月23日にはドル円が前日比で1%以上もの急落となり、ドルは2023年12月以来の安値水準に沈みました。要因としては、米国の長期金利急騰による米国債格下げ懸念やリスクオフで投資家が安全通貨の円を買ったこと、さらに米国の財政不安・貿易摩擦懸念からドルの信認が低下したことが挙げられます。実際、トランプ大統領の関税警告により市場心理が悪化するとともに、「財政赤字拡大リスクを背景にドルの妙味が低下した」面があると報じられています。ドルは対ユーロでも売られ、ユーロドルは一時1.13台までユーロ高・ドル安が進行しました。円高進行に対し、日本の財務省や日銀は市場動向を注視する姿勢を示していますが、日米金利差の縮小(米金利低下観測や日本のインフレ上昇による将来的な金融政策修正観測)もあって、構造的な円安ドル高トレンドには転機が訪びつつあるとの見方も出ています。もっとも足元では米金利の動向次第でドル円は乱高下する可能性が高く、引き続き米金融政策や景気指標に神経質な展開が続きそうです。

原油市場(WTI原油価格)

原油市場では、WTI原油先物価格が下落基調となった後、週末にかけてやや反発しました。ニューヨーク市場のWTI価格は週初から軟調で、一時1バレル=60ドル台前半まで下落しましたが、週末には買い戻しが入り4日ぶり反発となり、7月限価格は61.53ドルで取引を終えています。同じく指標のブレント原油も64.78ドルまで戻しました。今週は全体として弱気センチメントが原油市場に戻った週でした。主な背景は供給・需給見通しと地政学要因です。まず、主要産油国で構成されるOPECプラスが増産に転じる方針を打ち出すのではないかとの観測が広がり、将来的な供給増への警戒感が価格を押し下げました。加えて、米国とイランの核協議が進展し、対イラン制裁が解除されれば同国からの原油供給が増える可能性がありますが、今週行われた5回目の協議では決定打なく合意観測が後退したものの、依然として交渉の行方が注目されています。また、米中・米欧の貿易交渉停滞による世界経済減速懸念も需要面での下押し要因となり、市場の懸念材料となりました。実際、トランプ大統領がEUからの輸入品に高関税を示唆した直後には、WTI価格が一時2%近く急落する場面もあったと伝えられています。もっとも週末にかけて発表された米新築住宅販売件数が予想外に増加し2022年以来の高水準となったことや、ドル安基調も相まって原油相場を下支えしました。総じて、需給両面の不透明感が強まり原油は乱高下したものの、60ドル付近では押し目買いも入る展開となっています。市場では、来週以降のOPECプラスの動向や米欧の景気指標を睨みながら、原油価格は神経質な値動きが続くとの見方が多いです。

総括:安全資産への資金シフト

今週は以上のように株式、債券、為替、コモディティと幅広い市場で大きな変動が見られました。伝統的なリスク資産である株式・社債・国債が一斉に売られ、ドルも下落する一方で、ビットコインや金など経済サイクルと連動性の低い資産に資金が集まる展開となりました。これは米国の財政悪化や貿易摩擦への不安により「景気減速→企業収益悪化→資産価値下落」という連想が広がったためで、投資マインドが急速に慎重化したことを示しています。半導体やAI需要を手掛かりとした直近の株価上昇トレンドにもブレーキがかかりましたが、一方でインフレや金融不安に対するヘッジ手段としてビットコインなどオルタナティブ資産の存在感が増した週でもありました。来週以降、米国の金融政策や物価指標に市場の注目が一段と高まるのは確実であり、引き続きボラティリティの高い相場展開が予想されます。

次週(5/25〜5/31)の注目経済イベントと展望

来週(5月25日〜31日)は月末要因もあり、重要経済イベントや指標発表が相次ぎます。以下、主要な予定とその背景・市場インパクトについて整理します。

  • 週末~週明けの金融当局者発言: 週明けにかけて世界の中央銀行要人の発言が予定されています。現地25日(日)にはFRBパウエル議長が講演を行い、26日(月)にはECBラガルド総裁日銀・植田総裁のスピーチも控えています。米国市場は5月26日がメモリアルデー休場となりますが、休場中のこれら要人発言が金融政策のヒントを与える可能性があり注意が必要です。特にパウエル議長は景気やインフレ見通しについて何らかの示唆を与える可能性があり、発言内容次第では週明けの米長短金利やドル相場に影響を及ぼすでしょう。植田総裁の発言も、日本の追加緩和修正やYCC(イールドカーブ・コントロール)見直し観測に市場の関心が高まる中で注目されます。ラガルド総裁についても、欧州景気減速やインフレ動向を踏まえた金融政策スタンスが探られ、ユーロ相場や欧州株式への波及があり得ます。
  • 5月27日(火):米耐久財受注・住宅価格・消費者信頼感指数など – 連休明けの火曜日には、まず米4月耐久財受注が発表予定です。耐久財受注は企業の設備投資動向を示す指標であり、3月に大きく落ち込んだ航空機受注などが4月にどの程度持ち直すかが焦点です。結果が予想を上回れば製造業の底堅さが意識され、株式市場に安心感を与える可能性があります。逆に低調なら景気減速懸念が強まり、利下げ観測を誘う展開も考えられます。また同日、S&PコアロジックCase-Shiller住宅価格指数(3月分)や5月の米消費者信頼感指数(コンファレンスボード)も公表されます。住宅価格指数は昨年来の金利上昇で住宅市況が減速する中、下落基調に歯止めがかかるか注目されます。消費者信頼感は4月に低下しましたが、5月はガソリン安などを背景にやや持ち直すとの予想もあり、結果次第で個人消費の先行きに対する見方が変化しそうです。総じて27日の指標は米国経済の需給バランスや家計マインドを測る上で重要であり、市場全体のリスク選好度合いに影響を及ぼすでしょう。
  • 5月28日(水):FOMC議事要旨、公表 & その他イベント5月FOMC会合(5月6-7日開催)の議事要旨が28日に公開されます。今回のFOMCでは政策金利が4.25–4.50%に据え置かれ、声明文ではインフレや経済の不確実性に言及しつつ全会一致の決定でした。議事要旨では、委員間で議論された今後の利下げ時期や物価動向への認識が読み取れる可能性があります。市場では年内利下げ観測がくすぶっていますが、仮に議事要旨で「インフレ高止まりへの警戒」や「金融緩和の早期化に慎重な姿勢」が示されれば、利下げ期待が後退して長期金利のさらなる上昇や株価の下押し要因となり得ます。一方、景気減速リスクに多くの委員が言及しハト派的なトーンが目立てば、年後半の緩和期待が高まり株式に追い風となる可能性もあります。もっとも議事要旨は通常サプライズに乏しいことが多く、市場への直接的インパクトは限定的との見方もあります。同日はその他にも、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利発表が予定されています。RBNZはここまで物価安定のため積極的に利上げを行ってきましたが、最新の予想では政策金利(OCR)を3.50%から3.25%へ引き下げ、利下げ局面へ転じる可能性があります。実現すれば主要中央銀行の中で先陣を切った利下げとなり、グローバルな金融政策転換への思惑から他国の国債利回りや為替(特にオセアニア通貨)にも波及し得ます。さらに28日夜には米主要ハイテク企業(半導体大手)の決算発表も予定されており、市場の注目が集まります。特にAI需要を背景に半導体関連株が相場を牽引してきただけに、その企業の業績見通し次第ではテック株全体のセンチメントに大きな影響を与えるでしょう。翌日の東京市場や米株先物にも波及し得るため、要警戒のイベントです。
  • 5月29日(木):米GDP改定値・失業保険申請・日欧物価指標など – 木曜にはまず米1-3月期GDP成長率(改定値)が発表されます。速報値では年率-0.3%と僅かながらマイナス成長となっていましたが、在庫投資や輸出の上方修正によりマイナス幅が縮小ないしプラス成長に改訂される可能性があります(市場予想は小幅プラス成長への上方修正)。もし成長率が上方修正され景気の底堅さが示されれば、景気後退懸念が和らぎ株式にはプラス材料です。しかし同時にインフレや賃金上昇圧力も残るため、あまり強い数値はFRBの金融引き締め長期化懸念に繋がり長期金利上昇を招くジレンマも考えられます。逆に下方修正となれば景気後退入りへの警戒が強まる一方で、早期利下げ観測が台頭し債券買いに繋がるかもしれません。加えて米新規失業保険申請件数(5/24終了週)が発表されます。近週は申請件数が増加傾向にあり労働市場のひずみが出始めている可能性がありますが、もし増加基調が続けば労働市場の緩和=景気減速と受け止められ、利下げ観測を強める材料となるでしょう。反対に引き続き低水準に留まれば労働需給の逼迫継続と判断され、FRBが高金利を維持する根拠となり得ます。同日、日本では4月全国消費者物価指数(CPI)が予定されています(あるいは東京5月CPI)。直近の日本CPIは前年比+3.5%と目標を大きく超えるインフレが続いており、5月もエネルギー高や円安の影響で高止まりが予想されています。予想を上回るCPI上振れが確認されれば、日銀の金融政策に変更余地が出るとの思惑から円買い・日本国債売り(長期金利上昇)に繋がる可能性があります。特に日本は植田総裁の下で金融緩和修正のタイミングが模索されていますので、物価動向が一段と注目されます。欧州では5月消費者信頼感(独・ユーロ圏)指数などが発表予定ですが、総じて材料難の中でECB高官の発言が相場材料となる可能性があります。米国ではこの他、4月中古住宅販売仮契約件数(Pending Home Sales)も公表予定で、住宅市況の先行きを占う上で不動産セクターの投資家に注目されるでしょう。
  • 5月30日(金):米PCEデフレーター・個人所得支出・その他重要指標 – 週末金曜日は月末にふさわしく指標が集中します。中でも注目は米4月個人消費支出(PCE)物価指数です。PCEデフレーターはFRBが金融政策判断で重視するインフレ指標であり、中でも変動の大きい食品エネルギーを除くコアPCE価格指数の前年比がマーケットの焦点となります。直近3月のコアPCEは前年比+2.6%まで低下し、かなり目標2%に近づいてきました。4月も概ね2%台半ばが見込まれますが、仮に予想を下回り2%前後まで低下すればインフレ沈静化が鮮明となり、FRB年内利下げ期待が一気に高まるでしょう。これは株式や債券に追い風となります。一方で予想を上回り再加速の兆しを見せた場合、先述のトランプ関税の物価押し上げ影響なども意識され、FRBの追加引き締め観測がぶり返して市場にマイナス材料となり得ます。市場参加者はこのデータを受けて「パウエル議長お気に入り」の指標がどう動いたかを吟味し、6月以降の金融政策織り込みを調整してくるでしょう。加えて同日には、個人所得・個人消費(支出)(4月)も発表されます。これは名目ベースの増減ですが、インフレ下でも個人消費が堅調に伸びているか、あるいは頭打ちになっているかを評価する材料です。強すぎる支出増加はインフレ要因にもなるため一長一短ですが、ここまで米消費は底堅く推移しており4月も増加が続くか注目されます。さらに貿易関連指標(4月の商品貿易収支、卸売・小売在庫)も同日に速報値が出ます。対中関税やドル安の影響が輸出入にどう出ているか、在庫水準から企業の需給見通しが読み取れるか、こちらもマーケットはチェックするでしょう。その他、5月シカゴ購買部協会景気指数(PMI)や5月最終のミシガン大学消費者マインド指数も公表され、景況感の地域差や消費者インフレ期待など細かなデータが揃います。総じて30日の指標群は米国経済のインフレ動向と景気の強さを改めて測る重要なものとなり、その結果次第で6月以降のFRB政策や市場のリスク選好に直接影響を与える可能性が高いです。


以上のように、来週は経済指標やイベントが目白押しで、市場もそれに振り回される展開が予想されます。特に米国関連ではFOMC議事要旨やPCE物価など金融政策の行方を占う材料が多く、株式・債券・為替ともにボラティリティが高まる可能性があります。加えて、トランプ政権の通商政策動向(対EU・対日関税交渉の行方)や米債務上限問題など、政策面の不透明要因も並行して市場心理に影響を与えるでしょう。投資家としては、発表スケジュールを再確認しつつ、これらイベントの結果に一喜一憂せず中長期的なファンダメンタルズの動向を冷静に見極めることが求められます。過去の傾向を見ると、月末の指標サイクルを通じて市場のトレンドが転換点を迎えるケースもあります。来週の材料を総合的に分析し、適切にポートフォリオのリバランスやリスク管理を行うことが重要になるでしょう。



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