財政危機

【 スエズ危機におけるアメリカの通貨圧力とイギリスの撤退 】

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米中関税戦争は後戻りできない深みに入ってきているように思います。中国はメンツの国ですし、トランプ大統領には耐性がありません。


そして立場的にどちらが強いのか? と言えば、両国とも最悪で、その上で世界各国は状況に巻き込まれることになります。


今はまだ保有国債の売却をちらつかせる国はありませんが、これを行う国が出てきてもおかしくなく、中国は粛々と米国債を売却しています。


そして歴史を遡ってみると、アメリカがイギリスに対して脅しをかけて、基軸通貨の地位を奪っているのです。トランプは馬鹿な戦いをしかけたものです。


1956年、エジプトのナセル大統領がスエズ運河会社の国有化を宣言しました。これに対し、イギリス・フランス・イスラエルの三国は軍事行動を開始し、スエズ運河地帯へ侵攻しました。イギリスにとってスエズ運河は国家の生命線であり、この行動は自国の影響力を維持するためのものでした。


しかし、この軍事介入に真っ向から反対したのが、戦後の新たな覇権国家として台頭していたアメリカでした。当時のアメリカ大統領アイゼンハワー氏は、国際秩序の安定を重視しており、植民地主義的な行動を続けるイギリスのやり方に強く反発しました。


アメリカは、イギリスがこの軍事行動を継続するならば、自国が保有する大量のポンド建て外貨準備を一気に市場で売却する構えを見せました。これは、イギリスのポンドを暴落させ、経済危機を引き起こすという通貨を武器とした強力な外交的圧力でした。


当時のイギリスは、第二次大戦後の戦費で疲弊し、すでに経済基盤が弱体化していました。外貨準備を崩しながらの通貨防衛は困難であり、アメリカのこの「金融による脅迫」に抗うことはできませんでした。


こうしてイギリスは軍事作戦からの撤退を決定し、スエズからの影響力を大きく後退させました。この出来事は、イギリスの「帝国としての終焉」を象徴するとともに、アメリカが軍事力のみならず金融覇権によって国際政治を動かす力を持つ存在となったことを世界に示す事件となりました。


これは、爆弾ではなく通貨を用いて戦争を止めた、まさに「ドルの時代」の幕開けを告げる出来事でした。


アメリカに対して国債売却で脅しをかける国がでてこなくても、そのリスクを感じれば、アメリカ国債を手放すスピードは加速します。アメリカの金利は上昇し、株価は暴落します。


そしてアメリカ国債を大量に保有する日本は、大ダメージを受けることになり、大量に保有するアメリカ国債で巨額の含み損がでれば、やはり日本国債、日本株、日本円は耐えられないでしょうね。

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