2025年にはいり、米国の住宅市場は歴史的な下落局面に突入しており、全米の60%以上の地域で住宅価格が下落しています。
このような広範囲な価格の下落は、2008年のリーマンショック後の住宅バブル崩壊、2022年の急激な金利上昇期以来の出来事であり、決して一時的な調整とは言い難い、構造的な不調の兆しが現れています。
背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)によるインフレ抑制のための高金利政策が続いており、30年固定住宅ローン金利は依然として6.5〜7.2%前後に張り付いています。これは、住宅ローンを新たに組む買い手にとっては過大な負担となり、購買意欲を著しく低下させています。
その結果、売却が長期間成立しない住宅が増加し、全米の在庫水準は過去12か月で最も高いレベルにまで達しています。売り出し件数は前年同月比で20%以上も増加し、市場には供給過剰の兆候が見られます。
こうした状況のなか、住宅が市場に滞留する期間(DOM:Days on Market)は平均60日を超え、物件価格は売主による複数回の値下げを経ても成約に至らない事例が増加しています。高価格帯地域では調整幅が10〜20%に達するなど、特に西海岸・南部を中心に価格下落が顕著です。
また、低金利で住宅を保有している既存所有者は売却を避け、買い替えを控える傾向を強めており、市場に流動性が戻らないまま「買い手不在・売り手過剰」という深刻なミスマッチに陥っています。これにより、空き家率の上昇や賃貸市場の価格抑制効果も限定的になっています。
現在の市場は「バイヤーズ・マーケット」(買い手にとって有利な市場)であるにもかかわらず、買い手側も高金利と経済不安から積極的に動くことができず、まさに「膠着状態」に陥っています。
このまま価格下落が続けば、住宅を担保にした借入(HELOCなど)の信用不安や、ローン延滞率の上昇も予想され、地方銀行や住宅ローン証券(MBS)市場に悪影響を及ぼすリスクも否定できません。
住宅は国民の資産の大部分を占める重要な経済基盤であるため、この構造的な住宅市場の弱体化は、米国経済全体に深刻な波及をもたらす懸念があります。
債券市場、不動産市場(商業不動産、住宅とも)とも嵐が目の前まできているように見えます。トランプ関税の不確実性も続きますし、とにかく今はマクロ経済リスクを理解し、それに備えたポジション構築を行うことが重要です。
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