リーマンショックは100年に一度の金融危機と言われましたが、数年で市場は回復しました。この時何を行ったのかと言えば、世界中で紙幣を大量にばら撒きました。資産インフレを起こす形で市場を安定させました。
しかしそこからあと、世界中が負債を増やし続け、さらには金利も高い状況にありますので、負の連鎖が始まると収拾がつかなくなる可能性が高いです。
では当時どのようなことがおきたのか? これを簡単にわかりやすく説明してみます。
① サブプライムローンの乱発:信用の低い人にも住宅ローンが簡単に出されていました。収入が少なくても借りられるようになっていたのは、住宅価格が上がり続けるという前提があったからです。ですが、それが崩れた瞬間、返済不能が一気に増えました。
② 証券化によるリスクの拡散:銀行はその住宅ローンを細かく切り分けて、MBS(住宅ローン担保証券)という形で世界中の投資家に売っていました。リスクは分散されたように見えましたが、実際には中身の質がどんどん悪化していて、どこにどれだけのリスクがあるか分からない状態になっていました。
③ CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の過剰利用:CDSは、債券が返済されないときの保険のようなものですが、それが無制限に売買されていました。保険をかけすぎたことで、万が一に備えていなかった金融機関が連鎖的に危機に陥ったのです。
④ レバレッジの使いすぎ:金融機関は少ない自己資金で何十倍もの資産運用をしていました。ちょっとの下落で損失が跳ね上がり、資金繰りが一気に苦しくなる仕組みでした。利益を最大化するために、極端なリスクを取っていたのです。
⑤ 格付け機関の信頼失墜:本来は投資家にとって中立的な評価をするはずの格付け機関が、証券化商品に高評価をつけていました。しかもその格付けの依頼者が証券を作る金融機関だったため、評価が甘くなっていたという問題がありました。
⑥ 金融規制の緩和と監視の不十分さ:1990年代後半からアメリカでは金融規制がどんどん緩くなり、銀行がリスクの高い証券業務にも手を出すようになっていました。その結果、巨大化した金融機関がノーガードでリスクを抱えていたのです。
⑦ リーマン・ブラザーズの破綻:2008年9月、リーマン・ブラザーズが倒産します。政府が救済を見送ったことで「誰も助けてもらえない」という恐怖が広がりました。この出来事をきっかけに金融市場が完全にパニックに陥りました。
⑧ 信用収縮(クレジットクランチ):金融機関同士の信頼が崩れ、お金の貸し借りがストップしました。企業にも資金が回らず、実体経済まで一気に冷え込みました。信用という見えないインフラが崩れると、経済全体が止まってしまうのです。
⑨ 短期利益を追う経営:多くの金融機関では、経営陣が短期的な利益や自分たちのボーナスを優先して動いていました。長期的なリスク管理は後回しにされ、結果として、危険な商品を大量に抱えることになったのです。
⑩ グローバル化による連鎖波及:サブプライム関連商品は、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパや日本の金融機関も大量に保有していました。アメリカ発の問題があっという間に世界中に波及し、金融危機がグローバルに広がったのです。
そして現在のリーマンショック的リスク要因はあわせると10以上あります。このリスクの最新状況がどうなっているのか? これを常に監視することが重要です。
① プライベートクレジット市場の過剰膨張:伝統的な銀行を介さずに、ファンドや投資会社が企業に貸し付けを行う「プライベートクレジット」市場が、2020年代に急拡大しています。
リスクの構造:
多くは公開市場を通らないため、価格の透明性や担保状況が把握しにくい
債務者の与信審査が甘くなる傾向があり、デフォルト時の回収が難しい
レバレッジを掛けて利回りを高める構造が普及しており、小さな損失が大きな損害に発展する恐れがある
例:ブラックストーンやアレス・キャピタルなどが運用するプライベート債券ファンドは、米国の中小企業の資金調達の主流になりつつありますが、景気後退期には貸倒が連鎖するリスクがあります。
② テック・AI株の過熱と収益剥離:AIブームを背景に、NVIDIA、AMD、TSMC、Armなどの株価が急騰しており、PERは過去水準を大幅に超えています。
リスクの構造:
成長期待に基づく評価が先行し、実際のキャッシュフローや利益成長が追いついていない
AIブームの淘汰が始まると、一部の企業の収益が急減するリスクあり
株式指数(S&P500など)の一部銘柄に集中投資が起き、指数全体が脆弱になる構造に
過去との比較:ナスダックバブル崩壊(2000年)と同様に、テーマ過熱→バリュエーション崩壊→信用収縮という流れが再現される可能性があります。
③ ETFや派生商品の過剰利用:個人から機関投資家まで、ETF(上場投資信託)を通じたパッシブ投資が急拡大しています。
リスクの構造:
実態を理解せずに「安全」と誤解して購入している層が多い
相場急変時に流動性が消失しやすく、価格乖離が発生しやすい
派生商品の連動が複雑化し、市場混乱時にリスク伝播の経路になり得る
例:VIX連動ETFやレバレッジ型ナスダックETFなどは、相場急落時に自己増幅的な売りを誘発する要因になります。
④ シャドーバンキングの肥大化:ヘッジファンド、年金、プライベートエクイティ、保険会社など、銀行の規制外にある金融仲介機関(シャドーバンキング)が、リスクの受け皿となっています。
リスクの構造:
資産の評価が市場価格ではなくモデルベースで行われているケースが多い(評価の恣意性)
流動性がない資産を大量保有しているが、償還や換金要求が来たときには応じきれない可能性
規制の網から外れているため、破綻の兆候がつかみにくい
⑤ 格付けの信頼性と情報非対称性:企業の債券や証券化商品に対する格付けが、実態より楽観的に設定されていると指摘されています。
リスクの構造:
プライベート債務など、公開されていない財務内容に依存した格付けが多い
一部格付機関は利益相反の構造を残したままで、投資家の過信が残っている
格付けが突然引き下げられた場合、一斉売却や担保割れが起こるリスク
⑥ 中央銀行バランスシート依存の深刻化:FRB、ECB、日銀は、長年の量的緩和により巨額の資産を保有し、金利誘導のほか市場安定機能まで担っています。
リスクの構造:
金利上昇で債券価格が下落し、中央銀行の帳簿上の含み損が急増
QT(量的引き締め)に転じると、市場からの資金吸収が起き、リスク資産が調整される
投資家の「中央銀行がなんとかしてくれる」という心理が裏切られると、リスクオフが急展開する恐れ
⑦ 商業不動産の下落と担保リスク:テレワークの定着や金利上昇により、オフィスビルや商業施設の需要が大きく減少しています。
リスクの構造:
不動産評価額が下がることで、貸出担保の価値も低下し、追加担保が求められる
CMBS(商業用不動産担保証券)などの市場で価格崩壊が起きれば、銀行にも波及
地方銀行が多く抱える不動産融資の焦げ付きが深刻化すれば、信用不安にもつながる
⑧ 地政学的緊張と経済ブロック化:ウクライナ侵攻、中東紛争、台湾海峡の緊張など、複数の地域で地政学リスクが同時進行しています。
リスクの構造:
供給網の混乱やエネルギー価格の高騰によって、コストプッシュ型のインフレが継続
ブロック経済化(デカップリング)により、グローバル企業の利益が細る構造
制裁合戦により国際金融の安定性が脅かされる可能性
⑨ 利払い負担と財政の持続可能性:米国や日本を含む多くの国で金利上昇により国債の利払い費用が膨張しています。
リスクの構造:
財政赤字の拡大により、増税や社会保障費削減の必要性が高まる
利払い負担が投資や経済活動を圧迫
債務危機国(イタリア、トルコ、米地方政府など)の信用不安が起こると資金逃避が発生
⑩ 投資家の楽観バイアスと過信:AI成長期待、中央銀行の介入期待、株高維持への信仰など、投資家心理が極端に楽観に傾いています。
リスクの構造:
リスクを過小評価するため、調整局面での反応が過激になりやすい
「債券・株式・不動産が同時に高い」という逆相関の崩壊
感情的な資金流出が市場全体の機能を失わせる恐れ
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