現在のアメリカ経済を取り巻く環境は、表面的には労働市場が底堅く、株価が高値圏にあるなど一見好調に見えますが、実態は構造的な減速局面に入りつつあると考えられます。
2025年から2026年にかけてのアメリカ経済の厳しい見通しについて、主要な論点を整理してみます。
【1】FRB(連邦準備制度)の引き締め姿勢は実質的に継続
● 名目金利は高止まり(5.25–5.50%) FRBは2024年後半以降も政策金利を高水準に維持しており、インフレの鈍化が見られる中でも利下げには慎重です。
● 「秘密裏の引き締め」=実質金利の高止まり インフレ率が低下しても名目金利が高いままであれば、実質金利(名目金利-インフレ率)は上昇します。これは金融環境をよりタイトにし、企業の借入、投資、住宅市場などへの抑制効果が続くことを意味します。
例:名目金利5.25%、インフレ率2.5% → 実質金利2.75% → これは2000年代の「引き締めモード」と同等レベルの実質的金融制約です。
【2】財政刺激策の欠如と債務上限圧力
● 財政赤字は高水準だが、「新たな刺激策」は政治的に困難 2024年の米連邦財政赤字:2.4兆ドル超(GDP比6.4%) しかし共和党主導の議会は支出削減圧力を強めており、大規模なインフラ投資や現金給付のような「実体経済を押し上げる財政政策」は今後ほぼ期待できない。
● 債務上限問題の再燃懸念(2025~2026年) 政治の分断により、2026年にも再び債務上限交渉が市場を揺さぶる可能性。
【3】成長率は構造的に低下:潜在成長率2%時代へ
● 労働力制約と生産性の頭打ち 高齢化、移民制限、技能不足により、労働供給の伸びは鈍化 AIなどの技術革新の効果はまだ限定的で、労働生産性の加速も起きていない
● 潜在GDP成長率の鈍化(FRBやCBOも見通しを下方修正中) かつて3–4%あった経済成長率は、今後は年平均2%程度が上限。実際、2023–2024年のGDP成長率は一時的に高かったが、多くが在庫・財政効果によるもので持続性は低い
【4】構造的な金利・資産価格の下押し圧力
● 利下げ余地が限定的、かつ「高金利の長期化」 高水準の財政赤字・利払い負担がFRBの利下げ余地を狭める。株式市場や不動産市場に対する逆風が継続
● 米国債需要の構造変化 中国・日本などの海外勢による米国債購入が減少し、長期金利が不安定化。債券価格下落 → 金利上昇 → 株価・住宅価格への圧力
【5】企業業績の停滞と株式市場のバリュエーション調整 S&P500企業の利益成長率は2025年にかけてほぼ横ばい~マイナス成長の可能性。これに対し、株価は高値圏を維持しているため、PER(株価収益倍率)の低下圧力=調整局面が来るリスクが高い
【6】まとめ:2025~2026年の米経済見通しは以下のような構図
① インフレ 一時的に鈍化傾向
② 金利 高止まり(実質金利も高水準)
③ 財政刺激 制限的(追加支出は政治的に困難)
④ 成長率 潜在的に2%前後に減速
⑤ 株式市場 過大評価されており調整リスク
⑥ 国債市場 不安定化、長期金利の上昇リスク
この状況は、「景気は後退しないが、成長もできない」というスタグネーション型の鈍化局面であり、かつての「低金利・高成長」環境とは全く異なるフェーズです。
米中関係悪化、関税の不明確さ、様々不確かな要因が多すぎ、中期的な金融市場の読みが非常に難しい展開ではありますが、とにかく日米の債務問題が一番の懸案事項ですから、それぞれの10年国債の金利動向に常に注意を図る必要がありますね。
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