知識人からの学び

【 レイダリオ氏が警告するアメリカの覇権国家からの衰退の道 】

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現在の世界経済はアメリカの基軸国家からの衰退という過去になかなか経験のないタイミングを迎えています。


かといって中国が覇権国家の道に進むのかといえば、不動産バブル崩壊をはじめとして様々な問題を抱えています。


しかしそれ以上に状況が追い込まれているのが日本ですので、投資を行う上でも細心の注意を図る必要があります。


現在のアメリカは、かつて経済の中心であった大国が衰退し、財政と通貨の信認を損なう過程にある――レイダリオ氏をはじめとし、そう警鐘を鳴らす声が増えています。その兆候は、以下の3つの段階で明確に現れ始めています。


【第1段階】国債の利払いが異常な水準に達し、他の政府支出を押し出す


2024年度のアメリカ連邦政府は、国債の利払い費用だけで年間1兆ドルを超えると推定されており、これは日本円換算で約155兆円にも及びます。この額は、アメリカの主要な歳出項目のうち、国防費をも上回る規模に達しています。国防費は約8300億ドル、教育関連の年間予算は800億ドル前後、交通インフラへの支出も1300億ドル程度であり、それらを合算しても利払い費用には届きません。


このような状況は、金利上昇と債務累積が同時進行することで発生しています。米国債の利回りは、10年物でおよそ4.5%、30年物で4.7%前後に達しており、かつての1〜2%台の時代から見れば2倍以上の金利水準です。これにより、過去に低金利で発行された債務が償還期限を迎えるたびに、より高金利で借り換える必要が生じ、利払い費用が雪だるま式に膨らんでいます。


この利払いの急増は、教育、医療、インフラ、科学技術への投資など、本来経済成長に資する予算を圧迫し始めています。つまり、「利払いが未来への投資を押しのける構図」が、既に財政構造として定着しつつあるのです。


【第2段階】国債の発行が需要を上回り、金利が急上昇し、経済が落ち込む


アメリカ政府は、2025年度に約1兆6000億ドルの財政赤字を見込んでいます。この赤字を埋めるためには、新たにそれと同額の国債を市場に供給する必要があります。さらに、2020年〜2021年のコロナ期に大量発行された10年債などが、今後2〜3年で次々と償還期限を迎えるため、借り換え分も含めると、累計で5兆ドル以上の国債発行が求められることになります。


この莫大な国債発行に対して、外国人投資家の購入意欲が明らかに後退しています。たとえば、日本の米国債保有額は2024年末時点で約1兆1000億ドルまで減少し、以前のピークから明らかに後退しています。これは、円安と為替ヘッジコストの上昇により、米国債投資の魅力が薄れたためです。


一方、中国は地政学的な対立と外貨準備の多様化戦略の一環として、保有額を約7700億ドルまで減らしています。こうした背景により、アメリカ財務省が行う長期債(20年債や30年債)の入札では、入札倍率が1.3倍を割り込む場面も出始めており、市場における米国債の需給バランスが崩れつつあることが浮き彫りとなっています。


金利上昇の影響は、住宅市場を皮切りに実体経済に波及しています。例えば、30年固定型の住宅ローン金利は7%台に乗っており、新規の住宅取得が大きく減速しています。また、株式市場では割引率の上昇がバリュエーションを圧迫し、特に成長株やテクノロジー銘柄の評価が下落しています。企業も借入コストの上昇を理由に、設備投資や人員採用を抑制しており、2025年のGDP成長率は前年の2.1%から1.3%前後へと鈍化する見通しです。


【第3段階】中央銀行が金利上昇を嫌い、紙幣を大量発行し、通貨の価値が下落する


アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、物価安定と完全雇用の二重責務を負っています。現在はインフレ抑制を目的として政策金利を4.25〜4.5%の高水準に据え置いていますが、同時に実体経済の鈍化と財政不安の兆しが強まりつつあります。


仮に今後、景気が後退し失業率が大幅に上昇したり、国債入札が繰り返し不調に終わったりした場合、FRBは再び量的緩和、すなわちQE(Quantitative Easing)を再開する可能性が高まります。


実際、2020年から2022年にかけてFRBが実施したQEにより、FRBのバランスシートは4兆ドル以上拡大しました。その結果として、アメリカの消費者物価は累積で15%以上上昇し、ドルの購買力は明確に低下しました。この時期、金価格は1オンスあたり2000ドル近辺まで、ビットコインは一時6万ドルを超える水準に達し、通貨の代替資産への資金流入が加速しました。


今後、もし再びFRBが市場から国債を大量に買い入れるような事態が発生すれば、それは市場に対して「米政府は自力で資金調達できず、中央銀行に依存している」というメッセージとして伝わります。これにより、ドルという通貨そのものへの信認が揺らぎ、脱ドル化、資源通貨、デジタルゴールド(ビットコインなど)への逃避行動が再燃する恐れがあります。


【総合結論】


アメリカは今、まさに「大国の破綻兆候」とされる3つの段階のうち、2段階目までを明確に満たしており、第3段階の入口に立ちつつある状況です。


第一に、利払い費用が予算全体を圧迫し、他の経済成長関連支出を実質的に押し出しています。


第二に、国債市場の需給バランスが崩れ、金利上昇が進行し、実体経済に悪影響を及ぼし始めています。


第三に、通貨の信認がまだ維持されてはいるものの、中央銀行の介入が再び始まれば、ドルの価値と購買力が持続的に損なわれるリスクが現実味を帯びてきます。


このような構造的リスクの蓄積が、将来的なソブリン債危機や通貨危機に発展する可能性を示唆しており、国家としての信用が問われるフェーズに入っているといえるでしょう。


🏦 1. FRBバランスシート(2025年6月時点):最新のFRB週報(H.4.1)によれば、2025年6月4日時点でFRBの合計資産残高は約6.673兆ドルです。


ピーク時の2022年4月(約9兆ドル)と比べると、QT(量的引き締め)によって約2.3兆ドル縮小し、2020年4月以来の低水準にまで戻っています。→ この縮小は、コロナ時期の異常な金融緩和から正常化への転換が進行中であることを示しています。


📈 2. 消費者物価(CPI)の最新水準:2025年4月のCPI(前月比)は+0.2%、前年比では**+2.3%**と、前年の2.3%とほぼ横ばいの状態です


前年比は高止まりしていないため、インフレ圧力はやや弱まり、2%目標に近い安定した状況にあります。

具体的に見ると、食料(+2.8%)、電力(+3.6%)などが若干上昇し、エネルギー全体はむしろマイナス(–3.7%)である構造も確認できます。→ 現在、CPIからは「高インフレ→大幅緩和必要」という方向への再逆転圧力は読み取りづらい状況です。


🪙 3. 金価格の動向:6月9日時点のスポット価格は1オンス=3,323~3,330ドル前後で推移しています。


これまでの水準(2000ドル前後)に比べ2倍近く上昇しており、歴史的な高値圏にあります。→ 政策金利の停滞(通常は「高金利→金価格下落」となる構図)がありつつも、リスク回避の需要・ドルリスクを背景に金は高水準で推移しています。


₿ 4. ビットコイン(BTC)の現状:最新価格は約105,553ドル(前日比±0)で、日中の高値は106,368ドル、安値は105,110ドルです。


主要アナリストによると、5月には95,000ドル近辺でしたが、現在は100,000ドル以上で、平均値は約94,658ドルと高いレンジで推移しています。今後は120,000〜125,000ドル水準から150,000ドル以上という予測が多く、100,000ドル超を維持しつつ強気シナリオで再検討されている状況です。


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