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【 アメリカの関税収入が過去最高を記録する見通し、前年比で78%の増加 】

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アメリカの関税収入が大きく伸びています。ではトランプ大統領の関税政策が成功したのかといえばそうではありません。


確実に商品に関税は転嫁されますから、低所得の消費者ほどマイナス影響を受けることになります。そしてそうなれば、小売を中心とした企業の業績悪化につながります。


さらにインフレにつながるわけですから、FRBは利下げをできませんから、結果的に米国株下押し圧力、さらには米国債売りにつながります。


2025年5月におけるアメリカの関税収入は約230億ドルに達し、これは前年同月(2024年5月)の約3倍に相当いたします。この金額は、1カ月当たりの関税収入として過去最高額を更新する見通しであり、アメリカの通商政策や経済構造に大きな変化が生じていることを示しています。


このデータは、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールが米財務省の歳入データを分析した結果として公表されました。分析によると、2025年1月から5月までの関税収入の合計は682億3000万ドルに達しており、これは前年同時期の合計と比較して78%の増加を記録しています。


関税収入がこれほどまでに急増している背景には、いくつかの重要な政策的・経済的要因が存在しています。


1. 対中国・アジア諸国への関税強化:2025年に入り、アメリカ政府は特に中国からの輸入品に対する関税の適用範囲を再び拡大しました。トランプ前大統領時代に導入された「制裁的関税」が部分的に復活し、さらに**新たな戦略分野(電気自動車・太陽光パネル・AI関連機器など)**にまで関税が適用されています。これにより、対象品目の輸入コストが上昇し、それに比例して関税収入も増加しています。


2. インフレによる輸入価格の上昇:アメリカ国内では物価の上昇が続いており、それに伴って輸入品の価格も上昇傾向にあります。関税は輸入価格に対して一定の税率を掛ける仕組みであるため、同じ関税率であっても、課税対象金額が増えれば関税収入も増加します。


3. サプライチェーンの再編と国内回帰政策:アメリカは現在、サプライチェーンの中国依存を軽減すべく「フレンドショアリング(同盟国への分散)」や「国内回帰(リショアリング)」を推進しています。関税はその流れを後押しする手段として活用されており、中間財や設備の一時的な輸入増加が生じていることも、収入増加の一因です。


関税収入は、連邦政府の歳入全体の中では依然として大きな比率ではありません(1〜2%未満)が、今回のような短期的な増収は財政赤字の一部を補う効果があります。


一方で、以下のような副作用も懸念されています。


① 消費者価格の上昇:企業が輸入関税を負担した結果、それが最終製品価格に転嫁され、インフレ圧力が高まる恐れがあります。


② 報復関税による輸出への悪影響:アメリカの農産物や製造品に対して、貿易相手国が報復措置を取る可能性があり、輸出が停滞するリスクも生じています。


③ 世界貿易秩序との摩擦:WTO(世界貿易機関)のルールに反する可能性がある一方的な関税政策は、国際的な信頼関係に悪影響を及ぼす恐れもあります。

政治的背景と今後の焦点

今回の関税収入の急増は、2024年の大統領選挙後の通商政策転換が背景にあります。トランプ前大統領が再び影響力を強める中、「米国第一主義」政策が再び前面に押し出されており、関税政策は国内製造業保護と選挙支持層へのアピール手段として強化されている状況です。


このあと注目されるポイントは以下の通りです。


① 追加関税の対象拡大の有無


② インフレ率への影響とFRBの対応


③ WTOなど国際機関との摩擦


④ 中国・メキシコなど貿易相手国の対抗措置



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