アメリカ国債の信頼がどんどん揺らいでいます。CDSスプレッドは投機的水準まで上昇しており、日米とも長期国債がいつ急騰してもおかしく無い状況だと理解すべきでしょうね。
そして金利が急騰すれば、株式市場は急落しますし、日銀は窮地に追い込まれます。紙幣離れの加速、そして金とBTCの長期的な価格押し上げにつながるでしょうね。
2025年現在、米国債市場ではCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドの水準が大きく上昇しており、これは単なる投機的な動きではなく、米国の財政に対する構造的な不安を市場が明確に意識し始めた結果と考えられます。
米国の長期国債の格付けは、かつては最高格付けである「AAA」とされていましたが、2011年にS&Pによって「AA+」に格下げされ、その後も回復していません。これは、債務上限問題など政治的混乱のたびにデフォルトリスクが現実味を帯びたことを反映したものです。現在もこの格付けは維持されていますが、実際のCDSスプレッドは格付けと一致しない水準に達しています。
たとえば、アメリカの5年物国債に対するCDSスプレッドは、2024年から2025年にかけて50〜60ベーシスポイント(bps)前後で推移しており、これは格付けが「BBB+」であるイタリアやギリシャのCDS水準と同程度かそれ以上の水準です。つまり、米国債の「名目上の格付け」と、「市場が見ている実質的な信用リスク」には大きな乖離が生じていることになります。
このようなスプレッドの拡大は、米国の財政に対する構造的な懸念を反映しています。主な要因としては以下のようなものが挙げられます。
■ 恒常化する財政赤字:米国ではリーマンショック後から現在に至るまで、歳出が歳入を上回る構造が定着しており、財政赤字はGDP比で毎年5〜8%程度に達しています。とくにコロナ禍以降は緊急支出の増大により財政赤字が急拡大し、その後も恒常化しています。2025年時点でも年間1.7兆ドル前後の赤字が継続しており、これは持続可能な水準とは言い難い状況です。
■ 急増する政府債務と利払い負担:米国の連邦政府債務はすでに34兆ドルを超えており、2020年以降、年々約1.5兆〜2兆ドルのペースで増加しています。さらに、金利上昇局面にある現在、政府の利払いコストは急激に拡大しており、今後は年間1兆ドル超の利払いが必要になるとの試算も出ています。
これはかつてのゼロ金利政策下では想定されていなかった負担であり、歳出の中で「利払い」が社会保障に次ぐ第二位の項目になる可能性も現実味を帯びています。
■ 政治の機能不全と債務上限問題の常態化:米国では、与野党の対立により、連邦政府の債務上限の引き上げを巡る交渉が毎年のように混乱をきたしています。債務上限に達すると、新たな国債発行ができなくなり、政府支出が止まる恐れがあるため、市場はこの交渉の行方を注視しています。
過去には、こうした政治的混乱により、米国の一部国債が「テクニカル・デフォルト」になるリスクが意識されたこともあり、CDSスプレッドが急騰した事例があります。現在もその不安定な政治構造が継続しているため、CDS市場はこれを「慢性的な信用リスク」として織り込みつつあります。
CDSスプレッドは、国債の信用リスクに対する保険料のようなものであり、その水準が高まることは、投資家がその国の債務返済能力を疑問視していることを意味します。米国のスプレッドが「準ジャンク級」国家と同水準にまで上昇しているという事実は、アメリカの財政健全性に対する国際的な信頼が揺らいでいることを示しています。
さらに、こうした信用不安は以下のような波及を引き起こす可能性があります。
① 外国人投資家による米国債の保有削減:とくに日本、中国、サウジアラビアなどの米国債保有国は、リスク認識の変化に敏感です。米国債の信頼性が低下すれば、これらの国々が保有額を減らし、米国債の需給バランスが崩れるおそれがあります。
② 米国債利回りの上昇:国債が売られれば価格が下がり、利回りは上昇します。利回りの上昇は、企業や家計の借入金利を押し上げ、経済成長を抑制する要因になります。
③ 財政のさらなる悪化:利回りが上昇すれば、政府の利払い負担がさらに増加し、財政赤字が拡大します。これはさらなる信用不安を呼び、悪循環に陥る危険性があります。
現在のCDSスプレッドの水準は、米国が単なる一時的な問題ではなく、中長期的・構造的な財政リスクを抱えていることを示す、非常に重要な市場シグナルです。従来、米国債は「世界で最も安全な資産」と見なされてきましたが、その前提が崩れつつあることを示唆しています。
今後は、CDSスプレッドや利回りの推移とあわせて、国債の入札結果(応札倍率やカバー比率)、外国人の米国債保有割合、政治の安定性(大統領選や議会の構成)、FRBの金融政策スタンスといった複数のファクターを継続的に観察しながら、米国債市場の信用力の変化を注視していく必要があります。
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