
レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)の草稿から日本のケースと教訓部分をまとめてみました。ちょっと長いですが、これからの日本の状況を考えると非常に大切な内容です。
ダリオ氏はバブル崩壊後の日本政府の政策対応のまずさを指摘しています。
「1990年から2013年までの日本政府による債務問題の取り扱いは、やってはいけないことそのものだった。
美しいデレバレッジ実行のために行うべきと私が書いたことと真逆のやり方だった。
日本政府の債務のほとんどは自国通貨建てであり、難しい債務者・債権者間の関係のほぼすべてが日本の当事者間のものであり、日本は対外債権国だったのだから、美しいデレバレッジを行う能力があった。」
具体的に4点を指摘し、不十分な政策により日本がデフレに苦しむことになったと解説しています。
① 不良債権処理が遅れ金融仲介機能の不全が続いた。
② 雇用やコストに対する政策が硬直的だった。
③ 金利を名目成長率やインフレ率より低く引き下げなかった。
④ 債務のマネタイゼーションを行わなかった。
ダリオ氏が「美しいデレバレッジ」と呼ぶものは
政府が債務負担を減らすには様々な方法がある。増税や歳出削減がまず浮かぶが、これはデフレ的な政策だ。債務のデフォルトやリストラもデフレ的だ。
一方、債務を増やし財政支出し、同時に大量の債務を中央銀行が買い入れ金利を押し下げるなら、これはインフレ的だ。
この場合、政府単独の債務は増えるが、中央銀行との連結(日銀券を除く)では減り、さらにインフレにより債務の実質的負担が減る。
「美しいデレバレッジ」とは、デフレ的な政策だけでなくインフレ的な政策も組み合わせ、デフレを回避しつつ債務の負担を減らせというメッセージです。
ダリオ氏は、2013年以降のアベノミクスと異次元緩和が、まさにそれに着手したものだと解釈しています。
通常、アベノミクスや異次元緩和の目的が、政府債務を持続可能な水準まで戻す、つまりある種の財政再建にあると話す人は少ないです。
しかし、外国人からすれば、異次元緩和はむしろ「デレバレッジ」を目的としたものに映っています。
上記4点のうち②を除く点では、すべて債務者を助ける、言うなれば「徳政令」に似たものになっています。
債務問題の張本人である債務者を助けることに、日本の社会はモラルの上で躊躇しました。
債務者(最大の債務者は政府)が実質的な負担を軽減されるなら、反対側に損をした人がいます。
「(2013年以降)金利低下と通貨減価の組み合わせにより、日本国債は最悪の富の保蔵手段となった。米国債と比べると45%、金と比べると60%の損失となった。
これらや他の政策により、金利は平均で米金利より約2.2%低くなり、円は米国と比べ実質ベースで年平均5.5%減価した。
さらにいくつかこの時期に起こったことが紹介されています。
「例えば、2013年以降、米労働者に対する日本の労働者のコストは合計で58%低下した。同様に、日本国内でのコストは他国との比較で低下した。これは日本の競争力を高めた。」
こうした競争力の高め方は、労働者を貧しくすることと背中合わせの現象です。
” こうした低金利が(政府の)債務返済コストを大きく低下させ、2013年以降、日本(政府)の利払い費は50%超(2001年以降では65%超)も減り、債務返済が大幅に軽くなった。”
政府の利払い負担が楽になるとは、巡り巡って預金者らがその負担を肩代わりしたということです。
ダリオ氏は、日本における敗者としてまず円建て債務性資産の投資家を挙げています。これは日銀、円債保有者、円預金者などが挙げられます。そして同時に日本の労働者も敗者だと指摘しています。
1人あたりGDPで見て日本はかつて米国より豊かだったが、今では60%も貧しい(半分以下!)。
25年前の平均月収は3,500ドル(金13オンス分)だったのが今は2,500ドル(金1オンス分)。
自動車を買う代金は月収の8か月分から9か月分に、コンビニ弁当は労働10分分から16分分に。
ただし、これでも国内物価の低さが悲惨さを和らげているといいます。ただしこのあとは高いインフレ率が定着化し、悲惨さを加速させることになるでしょう。
こうした解説を見るにつけ、実は見えない財政再建が進められていたことに気が付きます。
最近、政府が実質的な増税・社会保険料引き上げを進めていますが、そういう施策がなくとも、国民負担はインフレ税によって確実に増えていきます。
インフレや通貨安に頼れば負担増がコントロールされないまま国民に降りかかってきているわけです。
ダリオ氏の解説をみても、やはり日本の債務問題は限界に来つつあると感じます。
レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)の草稿はダウンロードもできるので、今日の夜にでも行って、全てAIで和訳化、シンプルにまとめてみたいと思います。
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