
ケネス・ロゴフ氏(ハーバード大学経済学教授、元IMFチーフエコノミスト)の新著『Our Dollar, Your Problem: An Insider’s View of Seven Turbulent Decades of Global Finance, and the Road Ahead』は、2025年5月6日にイェール大学出版から刊行されました。
この本では暗号通貨の今後の成長についても語っているのですが、この見方が今まであまり誰も言っていない部分であり、よくよく考えるとこの可能性の大きさがわかります。この本はまだ英語版だけですが、早く手に入れたい1冊です。
📘 書籍概要
タイトル:Our Dollar, Your Problem: An Insider’s View of Seven Turbulent Decades of Global Finance, and the Road Ahead
著者:ケネス・ロゴフ(Kenneth Rogoff)
出版社:イェール大学出版(Yale University Press)
発売日:2025年5月6日
ロゴフ氏の新著『Our Dollar, Your Problem』における主張の核は、次のように整理できます。これは米ドルの世界的覇権の“構造的強さ”よりも“制度的・地政学的偶然性”に焦点を当てた分析です。
🔍 ロゴフ氏の主張の詳細
1. ドル覇権は「運と設計」の産物 ロゴフは、第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制によって米ドルが国際準備通貨の地位を確立したことを「運が良かった」と評しつつ、同時に「政治的な意思と政策選択の産物」であったと分析。特に、1971年の金とドルの交換停止(ニクソン・ショック)後の変動相場制移行、その後のウォール街の金融化とグローバル資本市場の自由化によって、ドルがデファクトの基軸通貨として再強化されたと指摘。
2. ドル覇権の脆弱性:5つの主要因
❶ 暗号資産・中央銀行デジタル通貨(CBDC)の台頭 ビットコインやステーブルコインはドル支配体制に直接的な挑戦とは言い難いが、ドル以外の価値保存・送金手段を拡大させている。中国のデジタル人民元(e-CNY)や欧州のデジタルユーロなど、国家主導のデジタル通貨がドル圏の排他性を揺るがすリスクがある。
❷ 中国の経済的台頭 中国は米国債保有を減らし、元建ての石油取引(いわゆる「ペトロ人民元」)やBRICS間の決済システム強化を通じてドル依存の迂回を試みている。ロゴフは、人民元の資本規制・為替管理の制限がある限り即時的な覇権交代は難しいとしつつも、「冷戦的ブロック化」がドル支配を分断する可能性を強調。
❸ 米国の政治的分断と財政不安 債務上限問題や頻発する政府閉鎖、巨大財政赤字による財政の信認低下がドルの安全資産性を弱体化させている。ロゴフは、「ドルは自由で開かれた政治経済体制への信頼の象徴だったが、それが揺らぎ始めている」と記す。
❹ 低インフレ・低金利時代の終焉 グローバル金利の上昇、債務の増加、金融引き締めという環境では、ドル建て債務の負担が新興国にとって耐え難くなりつつある。 これは結果的に、他通貨への分散や地域ブロック通貨(例えばASEAN通貨バスケット)の模索を促進。
❺ 同盟国との分裂的兆候(“分断されたドル圏”) 欧州やアジアの米同盟国も、ドル資産に過剰依存することの政治リスクをコロナ後に再認識(例:ロシアのドル資産凍結など)。ロゴフは「米国の金融覇権が、“信頼”から“恐怖”へと転じつつある兆し」と指摘。
🧭 今後の展望と提言(ロゴフの視点)
✅ 米国への提言 財政規律の回復と政治制度の信頼再構築が急務。FRBによるインフレ抑制とともに、グローバル・ドル資本市場の信認維持に向けた制度改革(例:米債市場の流動性確保、デジタルドル開発など)を促進すべき。
✅ グローバルシステムへの警鐘 世界経済は「単一ドル体制から多通貨体制への過渡期」に突入していると警告。これは秩序なき「ドルの凋落」ではなく、各国の新しい通貨選択権の時代が始まると主張。
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