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【 米中AI競争の行方は実は電力インフラで決まる!! 】

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実は米中AI戦争は、幾ら先端半導体の輸出を制限しても、アメリカは中国に敵わない可能性が高いです。


アメリカが徹底的に不足しているのは電力インフラなのです。この老朽化も激しいです。


AI戦争にアメリカが中国に敵わないということになれば、AI株バブルは終焉を迎えますので、1月のDeepSeek登場時よりもさらに酷い暴落が起きる可能性は高いです。


この点はしっかりと理解し、備える必要があります。


1. 背景:AIの飛躍的進展とエネルギー需要


近年、生成AI(ジェネレーティブAI)や大規模言語モデル(LLM)、自動運転、軍事や監視技術といったAI応用分野が急速に発展しています。特にアメリカと中国は、この領域で世界の主導権を握ろうと激しい競争を繰り広げています。

しかし、この競争は単なるアルゴリズム開発や半導体性能の向上だけで決まるものではありません。現在では、それらを支える電力インフラの整備状況が極めて重要な要素となっています。


AIモデルの訓練や運用には、膨大な数のGPU(グラフィックス処理装置)やTPU(テンソル処理装置)を搭載したデータセンターが必要です。これらの装置は、非常に大量の電力を消費します。例えば、OpenAIのGPT-4のようなモデルでは、訓練段階だけでも数メガワット規模の電力が必要とされています。


このように、AI技術の進展には電力の安定供給と広域な送電能力が不可欠となっており、「いかに効率よく電力を送れるか」が国家競争力を左右する時代に突入しているのです。


2. アメリカの課題:分断された規制と老朽化した送電網


アメリカは、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの資源に恵まれており、中西部やテキサス州では電力コストも比較的安価です。しかし、以下のような構造的な課題が、AI時代の電力供給にとって深刻な制約となっています。


① 長距離送電インフラの不備:アメリカでは州ごとに電力規制が異なっており、州境を越える送電線を建設するには、連邦政府、州政府、地方自治体、土地所有者、環境団体など、多くの利害関係者との調整が必要です。このため、長距離高圧送電網(HVDC)の建設には10年以上の時間を要するケースもあり、現時点でその整備はほとんど進んでいません。


② 再エネ供給地と需要地のミスマッチ:風力発電や太陽光発電が盛んな中西部や南部と、AI企業が集中する西海岸・東海岸の都市部(シリコンバレー、シアトル、ニューヨークなど)との間には地理的な距離と送電網の断絶があります。これにより、需要地に十分な電力を送ることができず、AI企業はデータセンターの建設場所に制約を受けています。


③ 民間主導と規制の分断:AIインフラの整備は多くが民間企業によって進められていますが、送電網に関しては依然として公共インフラとしての規制や許可手続きが厳しく、整備が進みにくい状況です。その結果、AI企業は必要な電力を確保できず、成長が鈍化する可能性を抱えています。


3. 中国の優位性:国家主導で整備された送電網


一方、中国は電力インフラの整備において世界をリードしており、特に超高圧直流送電網(UHVDC)の分野では他国を圧倒する規模と効率を誇っています。


① 世界最大級のHVDC網:中国では国家電網公司(State Grid)が主導となり、±800kVクラスの超高圧送電網を全国に張り巡らせています。この送電網の総延長はすでに10万km以上に達しており、世界全体のHVDC送電容量の6割以上が中国に集中しているとも言われています。これにより、内モンゴルや新疆ウイグル自治区などで発電された再エネを、数千km離れた北京や上海などのAI都市圏に効率よく低損失で送電することが可能となっています。


② 一体化された国家戦略:「東数西算」:中国では「東数西算」(東部でデータを使用、西部で計算処理を行う)という国家主導の戦略が推進されています。これにより、電力供給に余裕のある西部地域に大規模なAIデータセンターを設置し、計算結果だけを東部の都市圏に転送するという効率的なインフラ設計が行われています。エネルギー政策、送電網整備、AI都市の開発が国家戦略として統合されており、非常に高いレベルで政策連携が実現されています。


4. Invenergy CEOの警告:「インフラ整備が競争の前提条件」


アメリカの大手エネルギー開発企業であるInvenergy社のマイケル・ポルスキーCEOは、以下のような強い警告を発しています。


「アメリカがAIで中国に勝ちたいのであれば、まずAIの“燃料”となる電力を効率的かつ安定的に供給できる送電インフラを整備しなければなりません。今のままでは競争のスタートラインにすら立てないのです。」この発言は、AI競争が単なる技術力の争いではなく、「インフラ戦略の優劣」が直接的に競争力に結びつくことを明確に示しています。


5. アメリカが今後取るべき戦略的対応


アメリカが中国に対抗し、AI技術において主導権を握り続けるためには、以下の戦略的対応が急務です。


連邦政府主導によるHVDC送電網の整備支援)AIと電力を国家安全保障・経済安全保障の観点で統合し、整備計画の迅速化、予算投入、許認可プロセスの簡素化が必要です。


AIとエネルギー政策の統合的なマスタープラン策定)エネルギー省(DOE)、国防総省(DoD)、商務省などが連携し、AIハブと送電網整備を一体で設計すべきです。


中西部や南部へのAIインフラ分散とインセンティブ提供)電力に余裕のある地域へのAI投資を誘導するため、税制優遇措置や土地利用の迅速化が求められます。


6. 結論:AI覇権は「電力覇権」でもあります


AIは単なる知的競争ではなく、実は膨大なエネルギーを動かす国家的な構造競争でもあります。中国は国家主導による電力網の整備を進め、AI時代における「血流」ともいえる電力を全国に行き渡らせる体制を確立しつつあります。


一方、アメリカは分断された規制、老朽化した送電網、そして連邦と州の連携の欠如によって、AI競争における成長速度が制約を受けています。AI開発における本質的な勝敗は、どれだけスムーズにAI都市圏に電力を届けられるかにかかっており、その意味で「AI覇権=電力覇権」と言っても過言ではありません。


レアメタルもそうですが、中国という国は超長期的視点での戦略があります。それに対して今のアメリカ、トランプ政権には先を見通した戦略など全く感じられません。AI株バブルの終焉のタイミングは確実に持っておく必要がありますね。


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