
2025年10月、空売り投資家として知られるジム・チャノス氏は、米オンライン中古車販売大手 カーバナ(Carvana Co.) に対して「多くの赤信号を発している」と強い懸念を表明した。
背景には、信用力の低い個人向けローン(いわゆるサブプライム)市場の急速な悪化がある。特に、同分野の大手貸し手であった トライカラー・ホールディングス(Tricolor Holdings) の破綻は、市場全体の構造的リスクを浮き彫りにした。
チャノス氏はブルームバーグ・テレビジョンのインタビューでこう語っている。
「サブプライム自動車ローン分野で延滞率上昇、破綻やデフォルトが相次ぐ中で、カーバナだけがほぼ無傷で乗り切っているように見えるのは信じがたい。」
同氏は、カーバナが自動車ローンを顧客に提供し、それを証券化・販売することで多額の利益を計上している点に注目。特に、ローンの回収業務を担う関連会社 ブリッジクレスト(Bridgecrest) との関係性について、「完全な透明性が確保されていない」と懸念を示した。
トライカラー・ホールディングスは2025年9月、破産法第7章(清算手続)を申請した。同社は主に信用力の低い個人層を対象に自動車ローンを提供しており、顧客の多くはクレジットスコアが低いか、信用履歴を持たない層だった。報道によれば、債権者は2万5000人を超え、資産・負債ともに数十億ドル規模にのぼる。
破綻の背景には、延滞率の急上昇に加え、同社が保有するローン資産を複数のクレジットラインの担保として重複利用していた疑いもある。つまり、資産担保証券化(ABS)の仕組みを利用しながら、内部的に過剰なレバレッジをかけていた可能性が指摘されている。
こうした不正・不透明な会計慣行が明るみに出たことで、サブプライム自動車ローン市場全体に対する投資家の信頼は急速に揺らいでいる。米国内では現在、延滞率が5%を超えると報じられており、これは2010年代以降で最も高い水準だ。
カーバナは、オンラインで中古車を販売する米国最大級のプラットフォームである。同社は単なる小売業者ではなく、自社でローンを組成(オリジネート)し、それを証券化・販売する ことで利益を上げる構造を持つ。
つまり、カーバナは「車を売る会社」であると同時に「金融業的な構造を持つ企業」でもあるのだ。
この金融部門を支えるのが、グループ内の関連会社 Bridgecrest Acceptance Corporation(ブリッジクレスト)である。ブリッジクレストは顧客ローンの回収や債務管理を担っており、カーバナがローンを外部に売却した後も、実質的なサービス業務を続ける。
チャノス氏が問題視しているのは、この関係が投資家にとって「ブラックボックス化」している点である。
カーバナがどのようにしてローンの延滞リスクを処理しているのか、証券化後の債務の実態がどの程度リスクオフされているのか、あるいは関連会社との内部取引で利益を水増ししていないか——これらの点について十分な開示がないという。
チャノス氏が特に疑問視するのは、「同業他社が苦境に立たされる中、カーバナだけが高い利益率を維持している」点である。
トライカラーのようなサブプライム専業が破綻し、延滞率が急上昇しているにもかかわらず、カーバナがほぼ影響を受けていないように見えるのは、業界の現実と乖離しているという見方だ。
実際、カーバナは2025年上半期の決算で、ローン販売や証券化関連収益を主力収入源として報告しており、販売台数の伸びに比して金融収益が急増している。これが一時的な利益の先食いなのか、実態の伴う収益なのかは、外部から検証が困難である。
現在の環境では、サブプライムローン市場全体が信用リスクの上昇と資金調達コストの高騰に直面している。金利上昇と中古車価格の下落が同時に進行する中で、貸し倒れや証券化商品の評価損が拡大するリスクも高い。
そのような中で、カーバナが他社に比べて「異常に良好」な決算を出しているとすれば、それはむしろ警戒すべき兆候といえる。
投資家にとって重要なのは、以下の点を注視することである。
カーバナは、オンライン中古車販売の成功モデルとして急成長を遂げたが、その裏側にはサブプライム自動車ローンという不安定な基盤が存在している。
ジム・チャノス氏が指摘するように、同社が「サブプライム危機の次なる震源地」となるリスクは軽視できない。
もしトライカラーの破綻が象徴するように、市場の構造的脆弱性が再び顕在化するならば、カーバナの財務構造も試練を迎える可能性がある。
投資家は、華やかな成長ストーリーの裏に潜む金融的リスクを冷静に見極める必要があるだろう。
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